あとがき

 「いまの天皇、皇后ってすてきじゃない? でも、ちょっと考えてみない?」
政治の力で「代替わり」がおこなわれ、「新元号」が生まれようとするなかで、ちょっと立ち止まってみよう、と、この本は生まれました。
「天皇が代替わりする」「元号が変わる」「教育勅語が復活しつつある」「道徳教育で点数がつけられる」…。みんな私たちの生活には関わりがないことのように思えます。
 なかには、本編で書いたように、安倍政権の改憲・復古思想へのアンチテーゼを示している明仁夫妻への共感も少なくありません。
 しかし、それだけですませていていいのでしょうか。憲法に「天皇」という制度がある以上、天皇制の在り方を議論するのは国民の責任でもありますし、権利でもあります。

「問題はやっぱり天皇制。「日本は天皇を中心にした神の国」、この思想を教育勅語、戦陣訓、軍人勅諭などで徹底し、疑問を差し挟むことを許さない修身教育で日本人すべてを染め上げた。その根幹に天皇制があることを忘れてはいけない」
「日本国憲法は、憲法9条で軍隊を持たず戦争をしない国とした。その半面で、国政に権能を持たない天皇の制度を認め、国民統合の役割を持たせた。将来はとにかく、自由で、人権が尊重され、世界の中で生きていく平和日本の構想はいまの実際の姿から始めるしかない」
「いまの天皇制」を考え、過去の「天皇制支配」について、きちんと見直して考えてみよう、という本書の企画は、そんな問題意識から始まりました。
 あえて簡単に書けば、教育を中心にし、国民と教師、子どもたちを締め付けた国民統制のさまざまな仕組みは、まさに明治の天皇制がもたらしたものでしたし、その反省を受け、同じことを繰り返さないために、戦後、いまの天皇制度が生まれたのです。
 それから70年経っていま、私たちには、改めて明治憲法下の天皇制を否定し、まず、日本国憲法に沿った新しい制度をつくっていかなければならない責任があると思います。

「天皇制なんかやめちゃえばいい」―。そういう意見もあります。白紙で賛否をとれば、多くの支持を得られる意見かもしれません。同じ人間、出自の違いによって、差別されることは許されない、という民主主義、市民社会の原理からいえば、君主制がなくなっていくのは、歴史の必然ではないか、とも思います。
 しかし、じゃあ、いまの天皇制をどうしたらやめることができるのか。そう簡単なことではありません。
 それは恐らく、日本の社会が、9条を含めて憲法が完全実施された、平和で民主主義が貫かれ、みんなに基本的人権が保障される社会になっていく過程で議論されるしかないでしょう。

 いま、かつての防諜法や軍事保護法を思わせる秘密保護法、軍事同盟の時代を連想させる戦争法、治安維持法を思わせる共謀罪法など、問題法案をすべて「強行採決」で突破し、日本社会を「戦前」に戻しかねない安倍内閣が、「天皇代替わり」を利用し、明治礼賛、軍事大国化礼賛の天皇制キャンペーンを進めています。
 そのなかで、「いまの社会はちょっと変だな」と感じているすべての国民に、この本を読んでいただきたいと思います。

2019年2月21日   岩本努  丸山重威